【独自研究】100億宣言を調べてみたら・・・

とある製造業の支援先が売上100億円を目指している、とのことでしたので、まずは政府の「100億宣言」を調べてみました。

https://growth-100-oku.smrj.go.jp/index.html

現在の売り上げが80億や90億でしたら、現在の延長線上に100億を考えることができますが、今回の支援先は数十億です。
政府はいったいどんな方法で100億を目指そうとしているのでしょうか?

その答えは、「生産体制増強」「海外展開」「M&A」・・・

生産体制増強には、自社工場の増強と外注先の増強が含まれると思います。ただ、いずれにしても支援先の業界動向が右肩上がりの状況でしたら有効ですが、この支援先も含めて工業製品の多くは海外移転が進んでおり、自社にしても外注先にしても生産体制の増強は現実的な選択肢とは思えません。これは、国内中小をM&Aすることも同じで、そこそこの規模しかなく、消費者との接点のない中堅下請け企業は、いくら生産体制を増強しても、いくらM&Aしても海外流出を止めて業界動向を上向きに持っていくのは非常に困難だと言わざるを得ません。

海外展開は、市場拡大していることが前提でしたら、有効な選択肢と言えます。ただし、自社単独で海外進出することはリスクが大きいので、取引先と一緒に海外進出することをお勧めします。昔の、自動車産業のように、サプライチェーンごと海外移転することがいいと思います。ただし、そこでも安価な海外企業との競争は避けることができないので、QCDに磨きをかけることは言うまでもありません。また、相当な設備投資、人材確保、物流確保など、これまで当たり前だったことをゼロから始めなければなりません。経営者の覚悟がなければきっと成功しないでしょう。

M&Aについては、国内中小の多くが経営危機にありますので、企業買収自体はそれほど難しくはないでしょうが、国内市場が右肩下がりの業界でシェアを増やしてもそれ以上に負債が残ってしまうでしょう。M&Aするなら海外です。ただし、現地のビジネスに精通した方のサポートが必須ですし、単独ではなくサプライチェーンごと海外移転することをお勧めします。また、徹底的なIoT化が必要になるでしょう。QCDを磨くだけでなく、少ない従業員でもオペレーションできる体制を築くべきです。サプライチェーン上の企業でIoTを進めることで、ある程度の参入障壁を築くことができます。関税や人権問題、地政学上のリスクについても想定の上、対処方法を吟味しておく必要もあります。

100億宣言をもとに、売上100億を目指してどのような取組みが有効なのか、いくつか私見を述べさせていただきました。

しかし、よくよくこの100億宣言を読んでみると、政府は中小・零細企業を淘汰させて、中堅企業を育てようとしているのではないか、と感じます。私も、経営力のない中小・零細企業をいたずらに延命させるのではなく、中堅企業へ成長することは良いことだと思います。ただ、上記のように有効な選択肢を考えていくと、国内の99.7%を占める中小・零細企業で働く人々の仕事は大幅に減ってしまうことになります。これを良しとするのかどうか。国内の労働人口が減っていく中で、ある意味現実的で有効な選択肢なのかもしれません。

みなさんはどう思いますか??