年金はいつから受け取るのが得?60歳からのシミュレーションで見えた現実
60歳を前に「年金」について真剣に考えてみた
60歳になる前に自身の年金について考えてみました。
政府は、
・定年を65歳まで延長
・年金の支給年齢を65歳に引き上げた
・年金だけでなく、個人投資によって資産を増やすべくNISAを見直した
・定年後の資産は2000万円必要・・・
一方で、
・人口減少に歯止めがきかず、若者が高齢者を支える年金システムが維持できない
・支給される年金だけでは基本的な生活費すら賄えない
とまあ、我々の将来不安をあおるような情報ばかりが先行し、一向に解決の出口が見えない
そこで、自分の年金額が一体いくらか、基本的生活をするのにいくら足らないのか、今の仕事を何歳までする必要があるのか、損しない/損が少ない受給年齢は何歳なのか、などなどを「ねんきん定期便」をもとにあれこれ計算してみました。
まずは、自分の年金額を確かめるために「ねんきん定期便」を見ました。そこには、65歳時点の年金額が「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」に分けて書いてあります。
年金の繰り上げと繰り下げ
次に、年金の「繰り下げ支給」と「繰り上げ支給」の「支給率」をネットで確かめました。繰り下げの場合は月0.7%増額されますが、繰り上げの場合は月0.4%減額されます。この数字を見るだけで政府は「繰り下げ」を推奨している姿勢がよくわかります。
この支給率をもとに、各年齢で支給を開始した場合の「累積指数」を求めました。すなわち、年齢ごとにそれまでいくら支給されているのか、累積額になります。
エクセルを使って表を作ると以下のようになりました。

「元が取れる年齢」は意外と早い
ここで注意すべきは、65歳支給開始の累積指数が実年齢で何歳で逆転するのか、です。例えば65歳支給の場合は10年後の74歳の時に10ですが、64歳支給開始の場合の74歳時点では10.472とより多くの年金をもらっていることになります。そのように支給開始年齢と実年齢のマトリクスにおいて累積指数が65歳支給開始よりも多い領域に「黄色のハッチング」を付けました。繰り上げ支給を考えた時には、60歳支給開始だと79歳まで累積指数が多く、1年ごとにずれていきます。繰り下げ支給を考えた時には、66歳支給開始だと77歳以降に累積指数が多くなり、1年ごとにずれていくことが分かります。ここで特筆すべきは基準の65歳から1年遅らせただけで、累積で見ると77歳以降にならないと得をしない、という事実です。
ここまで準備できれば、次は実際の支給額を入れていきます。「ねんきん定期便」から65歳時点の支給額が記載されているので表の65歳×65歳の1のところに支給額を入れれば、支給開始年齢と実年齢のマトリクスが出来上がります。(個人情報保護のため、実際の金額は伏せてあります。)

この結果から、はじめに確かめたいのは、「これまでの納付額の合計」と「累積支給額」の比較です。少なくともこれまで納付した金額は取り戻したいと思うので確認しました。これまでの納付額は「ねんきん定期便」に記載があります。国民年金と厚生年金に分けて書いてあります。その合計を作成した年金支給額の累積額を比較したところ、表の「緑色でハッチング」した金額で達成しました。繰り上げ支給をすると達成期間が長く、繰り下げ支給をすると達成期間が短くなるのは当然ですが、長くても10年で「元が取れる」ことがわかりました。もちろん本来なら時間価値も考慮した検討でしょうが、今回はそこまでしませんでした。
受給開始年齢による年金受給額の差は心配するほど大きくない
さらに確認したいのは、「損と得の金額差」です。表では金額が伏せてあるので具体的な数字で説明はできませんが、節目の年齢で繰り上げ・繰り下げの金額がどれほどの差があるのか確かめます。例えば、ほぼ年金のみが収入源となる70歳、75歳、80歳、85歳の各年齢で年金支給額にどれほどの差があるのか。2025年日本人の平均寿命(男性81歳、女性87歳)と比べて自分が何歳まで生きるのかわかりませんが、この差をどのように考えるのかは個人の価値観だと思います。
妻とも相談しましたが、我が家の資産状況、何歳まで仕事をしたいか、完全リタイヤ後の生活イメージ、子供たちへの相続資産などを共有し、なるべく元気なうちに望む活動できるよう年金を早めにもらうことにしました。「60歳から年金をもらう」です。ただし、生活費は年金で賄い、旅行などの贅沢は貯蓄を切り崩す、という希望する財務スタイルを実現するには、税金も含めた年金の手取り額を確かめなければなりません。そこで、公的年金等控除や所得税を考慮した実際の手取り額を試算しました。
iDeCoも含めた「税金・手取り」の再計算
税金の計算の際、iDeco加入者はiDecoの支給方法も考慮しなければなりません。iDecoは60歳以上で一時金として受け取るか、5年以上20年以下の期間に年金として受け取るか選択できます。以下のエクセル表はiDecoを年金として5年、10年、20年に設定したときの場合を試算したものです。公的年金等控除では、上記の老齢年金と老齢厚生年金に加えてiDecoも年金としてカウントされます。それを含めて年金合計額がいくらになるのか、そこから公的年金等控除額をもとめ、さらに所得税+住民税を計算します。70歳までは仕事をする可能性があるので参考値になりますが、完全リタイヤ後は年金のみが収入になるので節目ごとの年間税額が把握できます。先の年金支給開始後の支給額から税金を引くことで実際の手取り額がわかるようになります。本来は国民健康保険や後期高齢者医療保険もありますが、税金と比べると少額なため割愛しています。また、念のため納税額の累積額も計算して、節目ごとの納税額の大きさを確認しました。

我が家の結論:「年金は60歳から受け取る」
ここまでで、年金支給年齢ごとの累積支給額から「年金は早めに支給を開始する、できれば60歳から支給してもらう」として、その際の所得税の金額から実際の手取り額を算出することができました。具体的な金額は伏せてありますが、「年金だけで毎月の基本的な生活を送ることができない」との結論になり「あと3万~5万円の収入が必要」ということが分かりました。
最後に:年金は「制度」ではなく「戦略」
将来不安を解消するためという名目でしたが、本音は完全リタイヤを目指して年金額のシミュレーションを実施しましたが、現実はそれほど甘くなく身体が動くうちは少額でも稼がなければならず、身体が動かなくなったら貯蓄を回せるよう、貯蓄も維持しなければならない、という最終結論です。貯蓄は子供たちへの相続とのトレードオフになりますので、相続についてもそのうちにシミュレーションしておこうと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。